"紀伊國屋のつか作品"という概念に殴られた話をしましょう。
そもそもわたしがつかこうへいという名前を知ったのは約7年前、演劇を観るようになってまだ日の浅い観劇赤子、ピチピチの10代(ギリ)の頃でした。元ジャニーズの町田慎吾さん*1を追っていた母に連れられて『引退屋リリー』に触れたのが最初。
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正直筋書きとかほとんど覚えてないし、役者のこともあんまり知らなかったから誰が良かったとかも何も言えないけど、これがわたしの短い観劇人生に大きなインパクトを残したことは確かでした。「難しくてよく分かんない!」でも「もう一回観たい!」とずいぶん輪郭のぼんやりした、しかし強烈な感情を持ったことだけ覚えてる。この「分かんないけどもう一回観たい」という感情を引きずり続けて6年半、やっとたどり着けたのが今回の十三回忌追悼公演だったのである。
じゃあなんで6年半もたどり着けなかったんだって話ですが、単純に金や時間に限りのある中で「紀伊國屋、行くぞ!」となるまでのきっかけが無かったからです。そこを今回後押ししてくれたのが漫画『ダブル』!!!!!!!
演劇界に生きる男2人を中心としたなんとも言い難い熱量を孕んだ"人間"の物語なのですが、漫画の紹介は本題ではないので一旦置いておくとして、演劇の話だし興味あるー、と読んでいたらずっと己の頭の隅で謎の存在感を放ち続けていた「つかこうへい」の文字が現れた。劇中で多家良と友仁、ヒロイン愛姫が『初級革命講座 飛龍伝』に挑むことになったのである。ほう。わくわくしながら稽古パートを読み、うぉー、これ実際の公演観るか戯曲でも持ってたらもっと面白いのにな、くやし~~~、などと思っていました。しばらくの間。
そしたら公演、あった。しかも近年やってた飛龍伝の方じゃなく、劇中と同じ『初級』。やるって。初級やるんだって!!!!!!!!!!観たー------い!!!!!!!!!!!
十三回忌公演の前半、『銀ちゃんが逝く』と併せてサクッとチケットを取りました。なんならその後えんぶで安くなってたから増やしました。というわけでやっと本題、以下感想です。
蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く
味方良介のスタアっぷりと声の強さに「なるほどね」と納得し(結婚おめでとう!!)、石田明の上手さを再確認し。ピカピカ発光する銀ちゃんと、ヤスの銀ちゃん好き好き大好き加減に"つか作品の人間像"の表現としてものすごく説得力を感じた。いや知らんけどわたしはそういう人たちだと解釈したので。
現代の、現実世界のものさしで見れば倫理観イッてる人間たちにどうしようもなく輝きを見出だしてしまう心情って根源的にはどこから生まれてくるんだろうな、などと考えていました
— なか (@koguuup) July 17, 2022
オタク的にいえば「(本作でいうなら映画や愛する人、己の追い求めるものに)狂っている人間の姿が好きだから」ってことになるんだけどなんかさ~~そう言っちゃうとちょっと陳腐な感じじゃん
— なか (@koguuup) July 17, 2022
陳腐というか感情をデフォルメしすぎだなってなる 感情をデフォルメするってなに??
— なか (@koguuup) July 17, 2022
初級革命講座 飛龍伝
ハ~~~~~ 声、汗、涙、人間
— なか (@koguuup) July 23, 2022
もう腑抜けです腑抜け こんなとんでもねぇエネルギーを真正面からくらって無事でいられるわけがないよ 観られてよかったです、初級革命講座飛龍伝
— なか (@koguuup) July 23, 2022
初日、生還したこの日のわたしの日記には「高橋龍輝のパワー!!!!!」とだけ綴られています。演劇の一番好きなところは"人間"を感じて浴びられること(劇中の人物の人間味のことでもあるし、それを板の上で演じている人間のことでもある)なんだけど、それをこんな濁流にのまれるように浴びせられたことはないと思う。なんかもう、すごかった……わたしはこれがママ飛龍(?)になったんですけど、それがこのウルトラマシンガン山崎の初級で大丈夫なんだろうか(何が?)
なんにしても、わたしはこの1回だけで山崎という人間のことが大好きになってしまった。熊田もかわいいクソ親父で好きなんだけど。熊田と相対した日々に執着するのも、小夜子への消化できない想いを抱え続けているのも、学がなくて"一生機動隊"としてしか生きられないことへの劣等感が根本にあるところとか、めちゃくちゃ"人間"を感じる。小夜子との関係性も山崎の独白でしかほぼ描かれないないのに、いやだからこそ情感たっぷりでさあ。機動隊と全学連、相容れない立場の男女が共に暮らし、惹かれ合っているという矛盾を、分かっていながら口にしてはいけなかった。いけないと分かっていながらそれが破られた瞬間のことを語る山崎の声色よ……。
ラストの山崎と小夜子、あの光景がすごく美しくてああ終わってほしくないなぁと思った
— なか (@koguuup) July 25, 2022
千穐楽、龍輝さんが汗だらだらで唾とばしながら照明を浴びて言葉を発し続ける姿が、銀ちゃんでありヤスであり熊田であり山崎であり、つか作品の人間たちの姿そのもに思えてならなかったです。
これが、紀伊國屋のつか作品か……!!!
*1:ここを見に来るような人は皆知っている気もするが嵐の大野さんのJr.時代のシンメ。私自身にとっても以前身を置いていたJr.界隈に興味を持ったきっかけのお人でもある