劇団朱雀 復活公演に狂っていた話

今年イチわたしを狂わせた現場の話をします。
早乙女兄弟の沼に遊びに来るようになって日も水位も(?)浅い*1わたしが初めて出会った朱雀の大衆演劇、熱量と実力とエモさで殴ってくるような公演だった。いやエモいって無闇に多用したくはない単語だけどこういう時に使うんだなって……思ったから……。

劇団朱雀 復活公演  @紀伊國屋サザンシアター
(11/27夜、28夜、30昼、12/13夜)

1部

初っ端から椎名林檎なの、度肝を抜かれてそんな……!ずるい……!となっていた。暗夜の心中立てのイントロにあわせて幕が開き、まず目に入ってくるのがシックでモダンなお着物に身を包んだ花魁、掴みとして大正解すぎませんか…かっこいい……一瞬で「6500円、元取れる」と勝ちを確信する。え~ん好き……。肩貸しがゆっくんさんなのも好きポイント……。手拭い置きかえるとこ毎回観察しちゃった……。
たいちさんの女形、意外と体格がいいのとかも相まって、動きの大きな振りで豪快さが垣間見える瞬間が個人的にめちゃくちゃ好きだった。「男性であるたいちさんが演じている」というこちらの意識と、流れるような美しさと妖艶さが全然違和感なく共存している感覚がたまらなかった、何というか、"そういういきもの"なんですよね。かと思えば天女さまのように見えるときもあるし(ワダツミの木とかあまりの美しさに双眼鏡を構えながら涙ぐんでしまった)母のような包容力がにじむときもある……。はあ……。
中盤奈々さんの曲で突然全身タイツのカモメが現れ笑わされたりしつつも最後は定番曲(であることが初心者にもわかる)夜桜お七で1部が締めくくられるの、5年間ずっと待っていた方々と大衆演劇を初めて体験する新規、どちらも取りこぼさないバランス感覚みたいなものを感じてため息出ちゃう。ああわたし観に来てもよかったんだ、って思えて嬉しかったな~。

2部 日替わりお芝居

『火のない所に男は立たねえ』
わたしの入った3/4回これだったの笑っちゃった。中島かずき先生だ!!!火消しの話だ!!!というだけで楽しくなってしまうんですけど(この夏はプロメアで大炎上していたので)、まあ~やっぱり好きに決まってる。ジャニオタ的感想は滝沢歌舞伎の鼠小僧ってこれがやりたかったんじゃない!?です。
かずき先生特有のセリフのリズムがやっぱ気持ちいいよなぁ、たいちさんもそれを流れるように発話するのが上手くてたまんない……。「身ぐるみまとめて剥いでやらぁ」が最高すぎた。あと「あばよ」の言い方が死ぬほど好き。
あとこれはゆっくんさんのための演目でもあるねと思ったんだけど、元気よくバリバリ見得切るし(たいちさん自ら拍子木やるのも最高だった)キザで熱いセリフ盛りだくさんだし火消しの姿で刀振り回してるのめちゃめちゃ格好よかった……。
客席まで全部使って走り回ってほんとにもう、勢い!圧!熱!って感じで最高だった。だいすき。

『安兵衛駆けつけ・高田馬場の決闘』
シンプルで分かりやすい話、安兵衛(たいちさん)に中津川(ゆっくん)がキャンキャン吠えながら挑もうとする、という配役にフフッとなりますね。酔っぱらい安兵衛さん、わたしが見たときマジのべろんべろんで何言ってるか分からなくて笑っちゃった。
決闘に駆けつけることを決意して高田馬場までの徒競走が始まったのめちゃめちゃ楽しかったしここ本当に全力で動いてるからかなり体力消耗しそうであった。

残念ながら『遠州森の石松』は観られず。悔しかったのでBRATS版のDVDを買った。観ますね。

3部 舞踊ショー

ここまでで既にじゅうぶん元取ってありあまるぐらいなの。でもその上まだ3部があるんですよ!? 3部、本当に麻薬。死ぬほど楽しかった……。

  • MATA©️TANA

いきなり爆速すぎて訳が分からなくなっちゃった。群舞が大好物のジャニオタ、PLAYZONEのGPZを初めて目にした時以来の衝撃。全員赤い衣装に身を包み、扇子を片手にはちゃめちゃに踊ってて、いやこんなの好きじゃん、あたりまえ体操!!!!!!!たのしい!!!!!「騒ぎ屋家業十何人!」の「十何人」のとこ、顔の向きを上、左、正面って動かす振りと音のハマり具合がすごい快感で、これ好きポイントです。
凛々しいポニテすがたのたいちさんがマイク持ってバリバリ客席煽って怪獣みたいに暴れまくってたの思い返すとときめきで胸が痛いし、サビの全力疾走はゆっくんさんが1等賞だったよ……。

  • お祭り忍者

プレゾンの若干トンチキなお祭り忍者を見慣れてしまったわたし、演出次第でこんな正統派にかっこいいお祭り男たちの曲になるんだな!?という謎の感動を覚える。なかなか他の演目では追えない方々をじっくり見られて初めて気づいたけど、この座組、マジで動ける人しかいない。

  • 東京ドンピカ

今、こればっかり聴いてる。中毒です。ギラギラの着物に髷にサングラスのたいちさんも何故か癖になるんだけど火消しのおさえさんを経てのこれ、気付いたら女装トミーさんのファンになっている。もうアイドルじゃん……。だいすき……。「ドンドンピカ」の振りのキレがめちゃくちゃ良いとこ、好きポイント。

ええ、狂いましたとも。セクシーーーな振りが最高!!!アヤノさんありがとう!!!!わたしこれは気付いたらあゆちゃんさんを見ていました。いやこの3きょうだいって天才しかいないんですか?17歳にしてあの堂々たるセクシーさ、好きになるしかないじゃん……。好き好き好きで燃えて狂わせたいの……。
あと客席にも腕を交互に挙げヒラヒラさせる振りを求めるたいちさん(11/27夜)、「初めての方も~ 戸惑わないで~~?」と仰ってたの面白かった。2回目ぐらいから戸惑わずにできるようになったよ。死ぬほど楽しかったな……。

  • あゝ無情

このゆっくんさんが!好きすぎて!!ひれ伏すしかない!!!セクシーな女性陣に囲まれて現れガシガシ踊るゆっくんさん、兄とはタイプの違うギラギラした気迫と野性味があの細い身体からガンガンに出力されていて……生まれて初めて「メロメロになる」ってこういうことなんだ……と思った。ピンク×ギラギラ×モサモサの羽織というキザすぎる衣装が信じられないぐらい似合ってて格好良かった……。\そんな魅力がたまらない/ \ゆっくんゆっくんどこ行くの~/

  • 歳々年々

神事かな…!?美しく布をひらめかせるこのたいちさん、森羅万象を自在に操れるんじゃないかしら……。後半ゆっくん出てきて対になるとこでもう、情緒がダメだった。運命のシンメを目にしたときの感情ですこれは……だって運命っていうか生来のシンメじゃん……あんな光景を目にして心が震えない人間はいるのか!?神秘。

  • Fire Bird

まとっていた布を脱ぎ捨て、上から降ってくる刀をキャッチする兄弟……吼えるたいちさん……これ…この流れがあまりに好きで…。ここの兄と弟、どんな気持ちなの……?
お芝居に組み込まれるものでもない、ただただ兄弟が向き合ってぶつかり合うための殺陣なんだと思うと爆音が耳に刺さるのと相まって情緒がグチャグチャにされて死んでしまう。
28夜でゆっくんさんが最初刀キャッチし損ねて若干盛り下がってたり笑 毎回ちょっとずつ様子が違うのも興味深かったんだけど、見た中で一番ゾクゾクしたのは13夜。バチバチに闘ってるというより同じ魂を持ついきものたちの"戯れ"だったっていうか……何だろうな、余裕、みたいなものが見えたのかな…おまけにシンクロ具合もすごくて震え上がっていました…こわい……。

  • 光明

まず群舞までの流れが好きすぎたんですよね…たいちさんは扇子をブン回しゆっくんは棒をブン回し千手観音……そしてわたし、おおきな旗を振る男たちのことがだいすき!!
もう、ここまでずっと感情が高まる一方じゃん。いやもう何なら1部の一番最初っから、上がりっぱなしじゃん。ここまで畳み掛けてきておいて!最後の最後で兄弟妹3人がセンターに集結するの、あまりにずるくないですか!?最前に兄と弟のシンメ、そのちょうど間に!2列目センターのあゆちゃんがくるフォーメーション!最高!!あゆちゃんの強くて美しくて凛とした姿が目に焼き付いて……。え~ん好きだ……。



本当に、大衆演劇のことも5年前までの朱雀のことも殆ど知らないド新規オブ永遠の新規のこともちゃんと掬い上げてこんなに楽しませてもらえて、こんな面白いものに出会えて感謝しかないです。劇団朱雀復活、おめでとうございます!!!
劇場に通ったっていうよりライブハウスに行く感覚に近かったのが個人的に面白くて、ステージにも客席にも自由な空気が漂ってたのは大衆演劇の性質なのかなあ、などと思ったりした。

そうあとたいちさんのこと、あ、意外とちゃんと笑ったりする人なんだなあと気づく瞬間がどこかで訪れるのって新規あるあるなんじゃないかと勝手に思っているんですけど、今回初めて見た朱雀のたいちさんは比じゃなかったというか、限界まで体力削りながら楽しそうに暴れ回ってる姿を見ながらああ、ここがこのひとのホームなんだなあ……としみじみ思ったり、作り手としてのたいちさんのセンスが死ぬほど信頼できるということを思い知ったりしました。いや~~好きだな、敵わないです……。
そしてそんな兄に挑んでくゆっくんさんのこと、永遠に見ていたいと思ってしまった。初めてゆっくんを見たとき惹かれた泥臭さのある気迫、みたいなものが、もしかして朱雀でならめちゃくちゃ浴びられるのでは!?と…。思っちゃったよね……。
この5年間待ち続けたファンではないけれど、今もう出会っちゃったから、また次までの間、一緒に待たせてもらってもいいかな!?今はそんな気持ちです。
まだ地方公演が残ってるししばらくは発作のように感情ぶり返すと思うけど、ひとまずこれで、わたしの出会った朱雀の記録とします。どうか最後まで怪我なく終えられますように。

*1:2015年あずみ幕末編のゆっくんが最初。しかし最近まで現場はあんまり行けてなかった、髑髏城もゲキシネから